教育

現代の生命と医療を考える~現代医療と法・生命倫理~

 生命科学の発展とその医療への応用は、治療技術向上や新薬開発などの恩恵をもたらす反面、生命への人為的介入に伴う倫理的問題や遺伝子情報にもとづく差別などの社会的副作用も有しています。本講義では、現代医療をめぐる社会的倫理的諸問題を治療あるいは予防するにあたり、どの様な法制度や法規制が望ましいかを、日本と米国などでの実例を取上げながら国による法政策や法制度の違いに留意し、比較法文化的視角から考えていきます。学生の皆さんが、現代医療の法的倫理的社会的側面に対する問題意識を広げ、多角的な視点から問題を分析し考察できる柔軟な思考能力を涵養してもらうことが授業の主なねらいです。

 

  1. 患者の自己決定権・インフォームドコンセントとパターナリズム:延命治療中止と尊厳死、医師の自殺幇助と積極的安楽死などの終末期医療をめぐる諸問題、不治の病や遺伝子情報などの医療情報の開示や輸血拒否の是非、医学研究と臨床治験をめぐる問題など
  2. 生殖補助医療技術をめぐる法・生命倫理:体外受精・人工授精・代理出産と親子関係、着床前遺伝子診断と胚選別、出生前診断と選択的中絶、優生思想と障害、新生児医療など
  3. ヒトゲノム解析と遺伝子情報のプライバシー:遺伝子情報に基づく保険や雇用差別、遺伝子増強とパーフェクト・ベービー、オーダー・メイド医療、ニューロ・サイエンスをめぐる諸問題など
  4. ヒト胚・クローン技術・iPS細胞など再生医療をめぐる倫理的法的問題
  5. 移植医療をめぐる諸問題:生体間移植・脳死臓器移植・臓器売買(医療資源の配分と公平性)
  6. 薬害や医療事故・紛争と法的解決:医療過誤訴訟における医療従事者の法的責任と損害賠償
  7. 医療制度改革と医療の規制緩和:健康保険制度と混合診療、医療費問題、医師不足、医療格差問題など